きのこのへや

■きのう、何読んだ？■
読んだものを節操なく残しておくページ
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2006/02/20（月）　 「気分は小学生」斎藤次郎　（岩波書店）
教育評論家の「ジロちゃん」が、青森県の百石小学校４年竹組に留学した。その１年間とその後の話がまとめられている。「子どものことは子どもに習え」と、この人はいう。赤冊子の言葉にちなんだ言葉らしい。わたしは、しばしば同じ言葉を口にする人たちが語る子どものことについて辟易していた。そこで語られる子どものことは、いかにもわかったようなことばかりで、子どもを代弁しているようで、どこかスカスカの、地に足のついていない子ども論が多かったからだ。この本を買った当初（学部２年のころ）は、この著者もまたそういう子ども論を展開する一人だろうと思っていた。
　けれども嬉しいことに、どうやらその見込みは外れていたようだった。自分の身をさらして、オトナである自分が、子どもと過ごす中でどう奇妙に歪んでいくかを示しながら、そこで捉え得た周りの子どもたちのことを書いている。表紙に付された詩（谷川俊太郎の詩）もその様子を見事にほのめかしているように感じる。
「およいでいるようでながされてる／ながされているようでおよいでる／ときのかわをくだっていく／おとなもこどももない／／こわいだろジロちゃん／ぼくもこわいよ／おもしろいねジロちゃん／わたしもおもしろい／／おぼれるかわ　あそんでくれるかわ／てつだってジロちゃん／きょうもたからものひろえるかも」（「気分は小学生」より：谷川俊太郎）

2006/02/17（金）　 「発想の航跡」神田橋條治 （岩崎学術出版社）
自分の指導教員が所蔵している本を半ば私物化して読んでいます。「発想の航跡」。

神田橋條治さんのこれまで書いてきたものがたくさん納められている。とりあえずがっちり読んだのは境界例に関する論文数本のみ。まだまだとっつけません。

2006/02/15（水）　 「そらトびタマシイ」五十嵐大介（講談社アフターヌーンKC）
五十嵐大介の作品集（マンガ）。

お茶会ギ仲間のじっとさんから貸してもらった。なんども読み直した。なんだか湿った土の匂いがしてきそうなお話が集まっている。
ある作品では、火事の現場で焼けた匂いにお腹を鳴らしてしまった女の子のこと（「そらトびタマシイ」）、ある作品では、怪力を人を損なうことにしか振るえない男の子のこと（「熊殺し神盗み太郎の涙」）、ある作品では、身体から砂が滲み出てくる女の人をめぐって、魔法のような時が過ぎていく様子が描かれている。食べるということ、お腹が空くということ、誰かにそばにいて欲しいということ、そういうわたしがいること、そういうわたしを、季節が、街が、抱えてくれているということ。こうした避けようもないことの上に立っているわたしたちのことを思い知らされる気がした。

2006/02/14（火）　 「博士の愛した数式」小川洋子（新潮文庫）
第一回本屋さん大賞にも輝いたこの本だったのに、今の今まで読んでいなかった。修論発表会の帰り、ようやくこの本を手に入れた。

まだまだ何度も読み返したい本だと思った。

直線とは実は目に見えないものなのだということ、虚数のこと、Π（円周率・パイ）という不思議な記号のこと、ゼロのこと、不意に出没する素数のこと…。

これらは私が算数や数学に大きくつまづくきっかけになったものたちだった。昔の私は毎回、それを聞いては途方に暮れた。目に見えない直線を思い描いたり、虚数ということをどう考えればよいのかわらかずに、ぼーっとした。
この本を読んでいたら、そうやって途方に暮れていた私もまんざらじゃないなと思ったりした。こうして目に見えないものたちを味わえることって、素敵なことだ。

2006/01/22（日）　 「赤冊子」服部土芳（ワイド版・岩波文庫）
読み始めました。「赤冊子（あかそうし）」、原文。
高校レベルの古文読解力がフル稼働中です。
と、いいながら、さっそく訳本はないかしらと探しています。見つかりません。
なけりゃあ根性で読もうじゃないのよ、赤冊子。
なんたって近世の文章。中世とかじゃないだけ御の字か。

日々、繰り返して読んでると、なんとなく分かってくる気がします。気がするだけ。
ちなみに赤冊子は三冊子という3冊組の一冊で、ほかの2冊は白冊子・忘水（別名：黒冊子）といいます。
白・赤・黒という配色の根拠も問うてみたいところ。

さらに文学史の本からの受け売りをしますと、三冊子は江戸中期の俳論書で、三冊。1702年（元禄15年）成立。芭蕉の談話を俳論風に系統立てたもの。
第一部「白冊子」は俳諧史・概論を述べる。
第二部「赤冊子」は不易流行・風雅の誠・軽みを論じる。
第三部「忘水（黒冊子）」は作句作法・修養について記している。

以上。お披露目終わり。

2006/01/14（土）　 「赤冊子」服部土芳
未読。

「意識と本質」（筒井俊彦）を読んでいたら出てきた。この本には、松尾芭蕉の詩論が示されているという。芭蕉の考える「本質」とは、他の本質論とは違った独特なものがあるらしい。

「赤冊子」に出てくる芭蕉の言葉で、前から気になっているものがある。
「松のことは松に習へ、竹の事は竹に習へ」から始まる一連の議論。
斉藤次郎の「百石小学校４年竹組留学記：気分は小学生」でも、この言葉が序章に引用されていた。

斉藤次郎の文章だけではまだわかっていなかった、この言葉の重みが、「意識と本質」を読んでいて、ちょっとわかってきた気がした。
というわけで読んでみたい「赤冊子」。

2006/01/09（月）　 「白夜行」　東野圭吾　（集英社文庫）
今度、ドラマ化しますね。「太陽なんか無かった。いつも夜。」

　一見、太陽のもとを歩き続けているかのような雪穂という女の子と、光の当たらぬところを歩き続ける亮司という男の子がいる。二人の物語が交互に展開される。二人が直接出会う場面はひとつもない。けれども、二人とその周りで起こる様々な出来事が、互いに互いの存在を暗示している。そのつながりが一体どのようなものなのか、はっきりとは分からないが、とても深くて濃密なつながりらしい。
　ラストシーンの次が知りたくてたまらなくなる本でした。

2006/01/06（金）　 「夕凪の街　桜の国」　こうの史代　（双葉社）
　もうすっかり評判になってしまった作品ですが。

　井上ひさしは、広島を主題にした「父と暮らせば」の序に、ヒロシマとナガサキを書くことを宣言していた。こうの史代は、あとがきに広島出身の著者がヒロシマを書くこと、ヒロシマを自分の言葉で語るということについて述べている。どちらも自分の言葉と方法を尽くしてヒロシマについて語った作品なんだな、と思った。

　ちなみに「夕凪の街」の主人公の名前は、広島に実在する町の名前でした。

2006/01/03（火）　 「意識と本質：精神的東洋を索めて」井筒俊彦　（岩波文庫）
　西洋の哲学でさまざまなかたちで問題になってきた「本質」と、本質をとらえること。これは東洋哲学のなかでも重要な役割を果たしてきたという。特に、東洋哲学の中で、言語の意味機能と人間意識の階層的構造と関連したかたちで取り上げられてきた。それぞればらばらに展開されてきた東洋哲学を、その背景にある複雑な歴史的背景をいったん棚に上げて、「本質」を手がかりに展開し、新しく構造化する試み。
　高校生のころ、朝日新聞の書評に出ているのを見たのが、この本を手に入れるきっかけだった。ちょうど高校倫理の授業で東洋哲学の章を勉強していた時期だったような気がする。あまりにも各思想についての理解が浅くて、なかなかこの本の理解は及ばなかった。大学に入って以降も、何かとこの本のタイトルを目にすることは多かった。
　東洋と西洋のあいだの学問・思想・姿勢のズレなどに悩んだ人たちがずいぶんこの本を手にとったらしい。わたし自身は、そうしたズレに身を置いているという自覚はあまりない。けれども、日本や中国で言い習わされていることや、考え方を、ヨーロッパの文化を背景とした研究者が論じたものなどを時折目にするようになってきた。この本を読む時期なのかもしれないと思った。
　実際に読んでみると、アラ不思議、結構読めるようになっていた。不慣れな言葉が多いけれども、議論されていることは意外と素朴なことなのではないかという気がする。東洋のさまざまな哲学が見渡せる上に、とても分かりやすいすっきりした言葉で書かれていて、面白い。
　まだまだ第1章を読み終えたばかり。今から読み進めて、後日改めてご報告したいです。

2005/07/01（金）　 キッチン・ストーリー(映画)
北欧映画。
出演： ヨアキム・カルメイヤー, トーマス・ノールストローム　他
監督： ベント・ハーメル

中年男性二人のお話。なのに、とにかく可愛いとしか言いようがない。ええ、かわいいんです。
ノルウェーとスウェーデンの独身男性の台所使用に関する研究が始まった。スウェーデンの研究者フォルケがノルウェーの独身男性（おうちにこもりがち）イザックの台所でイザックの行動観察をスタートする。 ルールとして調査者は被験者と話をしてはならない。台所の手伝いをしてもならない。
こんなルール、こんな関係が本当に続くんだろうか。
奇妙な関係が台所に展開する。
（こっけいに見えるけれど、これってどこかで起きていることじゃないか。この滑稽さを充分かみ締めながら、「観察」はなされなくちゃね。ちょっとした自分の反省でした。）
この奇妙で緊張した関係が少しずつ様相を変えていくのが、とってもうれしかった。この映画はかなりお勧めです。

公式ホームページ
http://www.kitchenstory.jp/index_flash.html

2005/06/30（木）　 映画「サロメ」カルロス・サウラ
レンタル屋さんの棚の隅っこにあったDVD。今借りなきゃ、もう二度と見ることはないだろうと思った。
この映画はすごい。
　オスカー･ワイルドの戯曲「サロメ」をもとに仕立てられていく舞台をとらえた映画。ドキュメンタリーとフィクションと、仕上がった舞台の世界が交錯していく。
　練習が進んでいくごとに少しずつ色づいていく舞台の世界。サロメは聖ヨハネに憧れ、拒まれ、殺気を帯びていく。そして、「ヨハネの首を」と義父ヘロデ王に所望するにいたる。怖いけれど綺麗でした。
　後半は一切言葉が差し挟まれない舞踏の世界だった。でも食い入るように見てしまいましたよ。
DVD買いたいな…。

2005/06/30（木）　 「薬指の標本」小川洋子　（新潮文庫）
図書室アルバイト中に読みました。 2作品所収。

「薬指の標本」 　洒落みたいだけど濃い恋のお話でした。もう、情景ひとつひとつが美しい。透徹した文章。でもその向こうに、ちょっと私には手の届かないような重たいものが沈んでいる。このお話はしんどいわ。描かれたものがひとつひとつぎょっとするくらい艶がある。

「六角形の小部屋」 　こちらのお話のほうが、わたしにはどこか馴染んだ。六角形の小部屋はただ語るための小部屋。この「わたし」が語るような「なにか」、身を滅ぼしてしまいかねないものが、どこかで私の中にもあるんじゃないかという気がする。そういうものに苦しめられながらここに居る。
　小学生のころ、痛いと分かっていて、血が出ると分かっていて、算数の授業中にステープラーで指を止めてみたことがある。小学校の2年生になると、ステープラーをお道具として持ってきてもよくなって、それでうれしくて、紙や消しゴムにばちばちとステープラーを止めて遊んでいた。ステープラーの針をずーっとつないで、鎖みたいなものを作って友達と遊んだこともあった。そのさなかだった。
　思い出すとかなりアホだけど、どうしてもそのときやってみたかった。六角形の小部屋で話されたこととは全く違うけれども、ふっと7歳のころのステープラーのことを思い出した。

2005/05/22（日）　 「西の魔女が死んだ」　梨木香歩　（新潮文庫・他）
「見えない現われ」の次元と聞くと、この本を思い出す最近。わたしの高校時代の恩師が紹介してくれた本。
　それはさておき。学校に行くのをやめたマイは、おばあちゃんの家で生活を始めた。おばあちゃんはマイに魔女修行の手ほどきをしてくれる。なんと魔女修行の本質は徹底的に「自分で決める」ということに貫かれているらしい。
　実は私自身は、すべて「自分で決める」ということには、何の力があるのだろうかと思ったりして、腑に落ちないでいる。納得いかないというところもある。この魔女修行という問いかけに自分自身で答えられるようになるのはいつだろう、と思ったりする。ただ、最近一つ思ったことは、「自分で決める」ということを貫き続けていると、実は「自分で決める」ことのできることなんて、ほとんど無いのだということに逆に気がつき始めるということだ。「自分で決める」という意思の中に、自分では決められないことの多さに気がつかされる契機がある、そんな気がする。

　思い描いてごらん、君の大切なものを。
　ありありと、手に取るように描けるだろうか。
　思い描いてごらん、君のそばにあって姿を現さない諸々のもの。
　思い描くこと、それが魔法なんだ。

2005/05/03（火）　 「父の暦」谷口ジロー
この漫画はかなりお勧め。父が死んだ。すっかり足の遠のいていた郷里に帰る。通夜の席で語られる父のこと。母のこと。そのなかで「私」の知らない父の姿が浮かび上がってきた。わだかまりが解けていく瞬間がそこに生まれた。
　「私」が郷里を思うとき、必ず思い浮かぶ情景がある。それはぽかぽかと心地よい、陽だまりの床の上。この情景がまたすばらしくよい。

2005/04/25（月）　 「プレコックス感」　リュムケ
岩波講座「精神の科学」別巻所収。中井久夫訳。

統合失調症の人と出会ったとき、特有の感じを抱くのだそうだ。その感じをとことんとことん突き詰めていったのがリュムケ。そしてその一連の論文を集めたのがこの章である。テレンバッハの「味と雰囲気」でも引き合いに出された論文。ある人にあうと、わたしはやはり何とも言えないある「感じ」を抱く。そういう話と連続するところがあるような気がしたり、しなかったり。短い、物静かに語る論文で、とっても魅力的。とりあえず、ざーっと読んだだけだから、まだまだ読み直したいなと思っている。

2005/04/20（水）　 「味と雰囲気」テレンバッハ　（みすず書房）
「メランコリー」が有名な精神病理学者テレンバッハの、「メランコリー」ほど有名ではない著作（というか絶版）。なんでも味覚や嗅覚を中心とする「口腔感覚」と雰囲気は密接な関係があるという。そこらへんの細かい話は抜きにして、雰囲気というなんとも捉え難いものをなんとか捉えようとした試みがきらきらと煌めく一冊だ。雰囲気ということがらを描き出そうとして取り上げているさまざまな文学作品や事例がまた面白い。
ちなみに扉絵にあるテレンバッハの肖像画が冗談抜きで怖い。でも雰囲気をよく表した絵なのだという。でも怖い。

2005/02/10（木）　 「偶然の祝福」小川洋子　（角川文庫）
「博士の愛した数式」が好評の小川洋子の作品。
この作品は、失ったモノをちりばめた宝石箱みたいなお話だ。軽やかに、本当に軽やかに、語られ、つづられていく。決してひとつひとつ語られる物語は、軽くは無いのだけれど。失踪していくものたちも軽やかに消えていくが、見送る側も同様だ。見送りつつ、それでもそのあとを追いかけもしない。もう一度あちらの世界で出会えることはあるのか。思いは失踪者の王国へと伸びていく。戻って来いとは言わない。あちらで出会おうと、小さな声で呼びかけているようだ。ああ、これが失われたものへの愛なのか。祈りなのか。

2005/01/29（土）　 「山伏地蔵坊の放浪」有栖川有栖 （創元推理文庫）
　『《隅の老人》の衣鉢を継ぐ名探偵　地蔵坊の行く手に解けない謎はない（かもしれない）。』という帯のついたこの本。
　山伏の地蔵坊は，バー「エイプリル」のカウンターに座り，「さすらい人の夢（ボヘミアンドリーム）」というカクテルを飲みつつ，バーの客に請われるままに，旅先で出会った殺人譚を謎解き付きで語ってくれる。とりあえず，推理小説としてのその内容は「おいといて」（この表現も小説の中に出てくる），はっとさせられたことをここでは話したいと思った。
　バーの客たちのあいだでの暗黙のうちの約束は，その殺人譚が本当の話か，法螺話なのか，といった疑いを口にしないことだ。あるとき，地蔵坊のいないとき，この客たちはこの約束を破ってしまう。そういうこともたしかにある。しかも，この暗黙の約束は，なぜ口にしてはいけないのかすらよくわからないし，いつも口にできそうなことなのに，偶然のように守られ続けてきたような類のものだった。
　そして，最後のくだりがある。
　「最近になって，僕はふと思った。信じるか信じないかを問うた途端に，掌中から消えてしまうものもあるのではないか，とも。そんなものはこの世にたくさんある。いちいち例を挙げなくても，人それぞれ思い当たるものがあるだろう。」
　たしかにそうだ，と小さな声が，わたしのなかで上がる。問うた途端に消えてしまうものがある。その儚さに唖然としてしまう。そして，もう取り返しがつかない。そんなこと。それなのに，「それ」は確かに，確固としてあるのだ。問い，失くし，心のなかで大泣きしながら，それでもわたしたちは歩いていく。

2005/01/05（水）　 「ハリー･ポッターと不死鳥の騎士団（上下）」ローリング　（静山社）
　ハリー･ポッター第5巻。とうとう5冊目に入ったな。「賢者の石」のころは、幸せに溢れていた物語が、こんなに暗いお話になっていくとは。苛立ち、腹立ち、怒声の飛び交う巻だった。「例のあの人」ヴォルデモードが深くこの魔法の世界に食い込んでいく、ということだけがこの暗さのおおもとではない。ハリー・ポッター自身も怒涛のときに入っているらしい。読む私にも、庇護してくれるものが手を離してしまったような不安、放り出された不安と怒りが身にしみてくる。
　「いつもそばには本が」あった。ファンタジーで言うならば、小学生のころには「モモ」（エンデ）や「はてしない物語」（エンデ）、「空色勾玉」の3巻（荻原規子）や「ナルニア国ものがたり」が小学校高学年〜中学校の時代に、そして、「ゲド戦記」（ル・グウィン）や「西の魔女が死んだ」（梨木香歩）、「目覚めれば魔女」、「ハリー･ポッター」などが高校生・大学生の時期を通ってきた。
　そっくりそのまま、同じ年の主人公と共に育つことのなかには、ときに目をそらしたくなることがある。自分をはるか先をあるく主人公には、よくわからないことが多くてときには途方にくれることがある。自分が身を置いているその時代を同時進行で読むのは特に辛いことも多い。共感という言葉ではすまないくらい、本当に辛いことがある。それを必ずしもお勧めしたりもしない。一歩、二歩、もしかしたら十歩も百歩も遅れてでもいい。それでも、その主人公の生き様を最後まで見つめていきたいとおもう。

2004/12/30（木）　 「蟲師」�　銑ゴ�　漆原友紀（アフタヌーンKC）
　とらえどころの無い感じがたまらない漆原友紀の作品集「フィラメント」を読んで、読んでみたいな、と思った。生きていると死んでいるの間の、それは曖昧な存在である「蟲」。あー、なんかあまりうまく紹介ができそうにないので、余計なことを言わないほうが良い気がしてきた。空気が特有で、すごいなーという気がする。もう少し読み込んで（まだ2回繰り返して読んだだけ）、またちゃんと書こう。とりあえず今日は読んだということで。

2004/12/26（日）　 「フィラメント」漆原友紀 （アフタヌーンKC）
現在、「蟲師」が人気を呼んでいる漫画家の作品集。
朝日新聞の書評で発見したマンガ。結構くせの強いマンガだということだったが、ストーリーが面白そうだったので買ってみた。しかも天神の紀伊国屋で。
なんとなくスーッと吹き抜けていってしまう感じで、起承転結がぼんやりしている、ような、していないような。とらえどころの無い感じが気になるマンガでした。

2004/12/20（月）　 「神療法面接のコツ」神田橋條治
　見ての通り、精神療法に関する本。神田橋條治さんらしい文章だな、と思った。神田橋條治さんといえば、梨木香歩の「エンジェルエンジェルエンジェル」の解説を書いている。これがまた、とってもよい。ファンタジーの評論は得てして深読みしすぎじゃないのかな、とか、ついていけんかも、という感じがあって、ドキドキしてしまうのだが、そのあとがきはちょっと違った。おそらく本人は深い読みがあるのだろうけれど、その読みをこちらにゴリゴリと押し付けてこないゆるやかさがある。
　この本は、この人が最初から最後まで書いている本だ。神田橋100%。わたしは解説の神田橋先生から入っているので、最初は違和感だった。でも、なんかいいな、という気がしてくる。図を書いて、神田橋先生自身が考えて、また図を作り直したら、イメージがいきいきしてきて、先生自身が嬉しくなったことなどが、そのまま書かれている。そういう地道な作業をぽつりぽつりとやりながら、考え込んだり、工夫したり、喜んだりする、その人の様子が見えてくるようだ。まるでかなり後ろを後追いしながらも、先生の姿を見て「だいたいこんな感じかな」と大雑把に掴んでいく感じ。なんだかなにが言いたいのかよくわからなくなったけれど、それこそ、神田橋先生の精神療法について、分からないながらも「雰囲気」に親しめる感じであった。

2004/12/10（金）　 「生物から見た世界」ユクスキュル
　umweltというキーワードは、実は結構以前から知っていて、面白そうだな、と思っていた。最初にであったのは、学部の2年生の時で、自閉症の子どもたちから見たとき、世界はどのように見えるのかという議論をした小林隆児の「自閉症児の関係障害臨床」で、確か章の冒頭に出てきたように思う。自閉症の人のものの感じ方は、異文化からやってきた人たちの感じ方や振舞いと似ているところがあるとかいう論文もちらりと読んだことがあるが、それは分かるような分からないようなところがあった。でも、小林隆児さんの描いていた世界は確かにわくわくするものだった。
　そのわくわくの源泉ともなったumweltということばを充分に説明してくれそうなこの本。結構わくわくしながら読んでいる。高校生物以来まったく無縁で過ごしてきた生物学という分野の本ながら、なんだかついつい夢中になってしまう。いつも電車で読んでいたけれど、駅で降りるのを忘れてしまいそうになる。どう面白いのかは、またいずれお話しすることにする。まだ充分読めていないから。

2003/10/26（日）　 「〈機能〉から〈様相〉へ」原広司
「〈空間〉〈機能〉から〈様相〉へ」より。取り組んでみてはポーンとはじかれている。何度か取り組んでみたが、今のところ腑に落ちた感じがしない。それでもゆっくり「あー、そういうことか」と思うことが増えてきているから、ましなのかな。まだまだ感想文を書くにいたらず。今回も惨敗。ひゅーるり♪

2003/10/22（水）　 AERAMOOK「教育学がわかる」（朝日新聞社）
いまさらなのだけど、読み直してみました。いろいろはっとさせられることもあり、へー、で終わることもあり。わたしの学部も教育学部だけど、そのバリエーションをはるかにしのいで、ひろーい範囲なんだな、教育学も、としみじみ納得。そろそろ卒論のほうの文献も読まなくてはなりません。

2003/10/17（金）　 「帽子」吉村昭
｢帽子」（？） 家のどこかにあるはずだけど、あっちこっち移動しながら読んで、その場に置きっぱなしによくするから、どこにあるかわからなくなりました。よって作者不明。日常的な中にあるちょっとした変化や小さな事件を描いている短編。離婚私用と決めた夫婦の最後の朝食。病床にある妻のために恥ずかしいけれどがんばって買いにいく帽子のはなし。何の奇跡も起こらないし、何の華々しい終わりもない、大きな事件も起きない、地味な短編だけれど、なんとなく身に染み入った。

2003/10/10（金）　 「十二国記」小野不由美　（講談社X文庫）
最近、なにかと眠れないときなどに手に取れるように、手近におくようにしているシリーズ。高校生のときから何度読み返したか。ここ最近はゲド戦記からも遠のいて、ファンタジーの本を手にとっていないのは、やさしい文章でも重たいからか、なんなのか。十二国記もまた、手近において読むようにはしているが、あまり今は一気に読めない感じである。

2003/10/03（金）　 「すべてがFになる」森博嗣　（講談社文庫）
森博嗣の作品は初めて読んだ。京極夏彦といい、この人といい、文庫本というのは手軽で、重量としても、体積としても鞄の中でかさばらないことがメリットだというのに、いったいこの厚さはなんなんだ･･･と思っていたので今まで読まずにいた（思えばくだらない理由なのだけれど、高校生とか、大学生みたいに本をたくさん持ち歩く人にとってはこの点は結構重要だと思う）。ひょんなことで知り合った方から、結構面白いよ、と紹介されて読み始めてみた（とはいっても、買おうと思い切れるまでにかなり時間がかかったのだけれど・・・）。ミステリという枠でくくられている作品だけれど、そこまでゴリゴリのミステリとかではないんだなあ、という印象を持った。

2003/09/20（土）　 『ビタミンF』　重松清　（新潮文庫）
中年の貫禄が出るにはまだ早く、すでに若者と呼ばれるには遅いという、30代後半。中途半端さの中で生きる人たちがここにいる。「セッちゃん」という短編が妙に印象的だった。子どもが語る、学校にいる「かっこわるい子、かわいそうな子」、セッちゃんっていったいなんなのか。身代わり雛っていったい何なのか。読んでいると、運動場の砂埃が目に浮かぶ。そこにある運動場の土の色は、わたしにとっては黄土色。

2003/07/20（日）　 「風土」和辻哲郎　（岩波文庫）
いつになれば読み終わるのやら？序文でかなり手間取り、そのまま受験に突入。今から改めて読み始めます。

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